「ART FAIR TOKYO19」では、キュレーターを招聘し優れた映像作品をプログラム形式で紹介するための新しいセクション「フィルムズ」を創設致します。
初回となる本年はキュレーターで研究者、また実験映像プラットフォーム〈non-syntax〉を主宰する金秋雨がプログラム・ディレクションを担当し、糟谷恭子、小金沢健人、近藤聡乃、倉知朋之介、佐藤瞭太郎、篠田太郎、獸+太郎、高山明、ティントン・チャン、Prius Missile、三田村光土里、山本篤が参加する『Super Original』を行います。
スーパーオリジナル | Super Original
日常における時間の体験は、現代では消費と計算の対象となるデータとして知覚され、大衆文化や芸術の感覚プロセスにもその視点が不可避となっている。断片化された感情はデータ化され、特定の感覚を刺激する商業化された製品へと変換される。それは視覚技術の発展を促した一方で、視覚体験を普遍化させてもきた。現代の映像芸術が直面する課題は、純粋な感覚を生み出すことではなく、映像を通じて時間を個人的なものとし、存在を例外的な状態へ導くことにある。
本上映の作品では、感覚の固定化されたシステムに抵抗し、現実と仮想、身体と物質の相互作用の中で、例外的な時間——すなわち現実とは異なる時間を構築しようと試みる。これらの映像は物語によって観客を現実から切り離すのではなく、創作者が世界へと超個人的な時間の蓄積を回帰する手段となる。作品を生み出すために費やされた時間は、鑑賞者の体験となって補完、分配される。映像内外における時間体験に焦点を当てることで、作品は現実の境界を再び切り開く契機となり、知覚の中で仮想的な次元が拡張され、新たな例外的な時間が生まれるだろう。
映像はもはや単なる流動する画面ではなく、再命名の手法——物事に意味を与える瞬間となる。それぞれの映像は、孤高な建築物、はるか遠くにある海の境界、誰かの未完成の言葉、ことばに整理できない感情など、何かへの扉を開く可能性を孕んでいる。non-syntaxがこれまで試みてきた実験を継承しつつ、映像があふれる現代における時間体験の切断と再配分に着目し、私たちはどのように見るのか、世界を理解するのかを問い直す。
キュレーター
金 秋雨
3月7日の一般会期の開幕上映には、異なる文化や歴史が交差する独自の手法を用い、本プログラムのコンセプトを象徴する存在として高山明による《Our Songs – Sydney Kabuki Project》を上映します。
本プログラムでは映像作品の羅列的な上映に留まらず、それぞれにアプローチの異なる作家を組み合わせて紹介することで日本の現代美術における映像表現のあり方を考察することまでを視野に収め、映像というメディア又はその表現が果たしてきた役割と今後の展開について問いかけます。
今日のアートシーンにおける最も主流なメディアの一つであるにも関わらず、日本のアートフェアでは展示機会が少なかった映像表現をフェアという場で紹介し、新しいコレクションの機会を提供することを目指します。
〈参加アーティスト〉
糟谷恭子 / 小金沢健人 / 近藤聡乃 / 倉知朋之介 / 佐藤瞭太郎 / 篠田太郎 / 獸+太郎 / 高山明 / ティントン・チャン / Prius Missile / 三田村光土里 / 山本篤
〈参加ギャラリー〉
KOTARO NUKAGA / CON_ / ShugoArts / 日動コンテンポラリーアート / MEM / MISA SHIN GALLERY / Mizuma Art Gallery / Yu Harada
〈企画協力〉
CON_
ART FAIR TOKYO19 開催概要
会 期:一般公開 2025年3月7日(金)− 3月9日(日)
会 場:東京国際フォーラム B2F ホールE / B1F ロビーギャラリー
主 催:エートーキョー株式会社
後 援:アメリカ大使館、カナダ大使館、ハンガリー大使館/リスト・ハンガリー文化センター、在日メキシコ大使館、ブリティッシュ・カウンシル、駐日ベルギー王国大使館、シンガポール共和国大使館、アイルランド大使館、ドイツ連邦共和国大使館ほか
協力美術館:SOMPO美術館、ポーラ美術館、三菱一号館美術館、東京オペラシティーギャラリー、戸栗美術館、国立新美術館、東京都庭園美術館、国立新美術館、WHAT MUSEUMほか
特別協力美術館:東京都現代美術館、森美術館、東京国立近代美術館ほか
協 賛:三井住友信託銀行株式会社